過去、現在そしてこれからの春吉の魅力を語るコラム
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あっぱれ晴好バックナンバートップ>第8回 江角蒲鉾店
 

第8回
「世は定めなし!人生イロイロ、
オカマにボコボコで職人に出会う」
〜 江角蒲鉾店 〜

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月晴れ、五月蠅い、五月病。
唐突ですが、
本当に人生はイロイロありますね。
前回【めでた屋】の体験(詳しくは前回の最終段落を参照のこと)で、
ぼくの人生観は180度変わりました。
ほら、語り口調もまるで関東人になっちゃったでしょ?
それぐらいに、ある意味新鮮で、色んな意味で衝撃的だったのです。
あの夜、ぼくは名前も知らない両刀使いのオトコに好き放題にされてしまいました・・・(こんな告白いらんだろ!!)。
精神的、そして肉体的に解放(介抱かも?!)されてからは飲んだくれの日々。
あの日のことが忘れられないのか、
毎夜、【南天神通り】、通称【渡辺通人情横町】に軒を連ねる酒場で飲み明かしているのです。
あ〜、思い出したくもない。酔っぱらい、連行される

晩は【関】のカウンターで、あの日の出来事を肴に日本酒を飲っています。
「あぁ、なんであんなことになってしまったのだろう・・・」とブツブツ独りぐちる。
▲厳しい眼差しの師匠は親子鷹で有名なアニマル浜口に似ている。気の優しい方だ。
しかし、小声で言葉に発してみたところで気分転換にはまったくならない。自ずと酒杯を重ね、そろそろ酩酊気味になってきた。主人を相手に絡み酒がはじまる。「抵抗できなかった自分が情けなくてぇ。だってぇ〜、オカマにボコボコにやられてしまったんですから。そう、ぼくはカマボコにされたんでぇ〜す。クソーッ!カマボコのバッキャロー!!」とシャウトした瞬間に、ぼくは胸ぐらを強く掴まれた。
「オイ!さっきから聞いとったら何ば情けないこと言いようとや!しかもオレがこの近くでカマボコを造っとうと知っとっての狼藉やなかか?貴様の根性ば叩き直しちゃるけん、これからウチに来い!気合いだぁ〜!」
と、スゴイ剣幕で捲し立てる、ほんのりアニマル浜口似のおとーさんにいきなり連行されたのでした。
創業100年の【江角蒲鉾店】へ。住み込み修業がいきなりスタート!

ば意識を失いかけながら着いた先は、【人情横町】最南端突き当たりにある【江角蒲鉾店】だ。
「オレがココの4代目、江角幸一だ!家内と2人でカマボコと天プラを造っている!創業100年の老舗だぞ!お前さんは今日から3日間、住み込みで修業すべし!ほれ、前掛けを着けろ!気合いだぁ!オイ!」(実際の江角さんはとてもジェントルマンです)
住居と併設する工場の柱時計を見上げると只今午前 1時30分。
これからいつも通り仕込みを始めるという。気合い負けをしたぼくは当たり前のように作業に取りかかったのでした。
見よう見まねでカマボコ造り。練る、ひたすら練る

▲工場には様々な機械がならぶ。ひと昔前までは1日に500個は造っていたそうだ。
ずは板場で原材料の下ごしらえ。
板付きのカマボコは魚市場で仕入れた新鮮なエソ、グチ、ハモ、カナガシラなどを使う。魚の頭を落とし、3枚に下ろすことからスタートだ。普段から料理をするぼくは慣れた手つきで次々とこなしていく。が、江角さんの魚を捌くスピードはぼくの10倍速だ。
次に下ろした魚肉を井戸水にさらし脂抜きをする。しっかりと脂抜きを済ました【さらし肉】を包丁で丁寧にミンチに。このミンチ具合もあまりきめ細かくしては食感が楽しめない。そのバランスは職人の腕の見せ所だ。ぼくは師匠(いつのまにか弟子になっている)の指導のもと、ミンチをなんとか仕上げた。
開始からまだ1時間ほどしか経っていないのに、ぼくの足腰はすでにパンパンに張っている。ミンチを大きな【すり鉢】に投入し、昆布ダシや酒を加え、塩で味付けしながら、大きな【すりこぎ】でひたすら練る、練る、練る・・・。この工程がカマボコを【練り物】と呼ぶ由縁である。
堅めに練り上がった身を【手付け包丁】で【板付け】しながら形を整えていく。
成形したものは、まず40度くらいの低温で加熱してカマボコの【座り】をつける。そのあとに90度くらいの高温で蒸して仕上げるのだ。できあがったものを、おかみさんが1つひとつ丁寧に包装している。
塩加減がカマボコの命!美しい細工カマボコに眼を奪われる

「カ
マボコ造りは何よりも素材の味を引き立てる塩加減が難しい。 これは オレの舌加減やね」 と職人技を口伝する師匠は、 丁寧に裏ごしをした甘ダイを材料に【細工カマボコ】を仕上げている。扇、松竹梅、鶴亀と祝いの席で食卓にならぶ、あれだ。さすがは仕事が速い!繊細な仕事を慣れた手つきで施していく。
「ついこの前はカマボコでデコレーションケーキば造ったっちゃんね。すごかろう?がははは」と真剣な表情から一転、破顔する師匠。その師匠を見守るおかみさんの温かい表情は何ともいえない。
色んな味が楽しめる天プラ。職人とは何ぞや?

「さ
ぁ、次は天プラを造るばい」と、今度は太刀魚、カレイ、サバ、アジなどが板場に並ぶ。これを同様に下ごしらえし、板付けカマボコよりやや柔らかく仕上げる。あとはこれを油で揚げるのだ。角天、丸天、ゴボウ天、エビ天をはじめ、イカ天、レンコン天、タマネギ天、シソ天など種類も豊富だ。カマボコ&天プラで約70種のバリエーションを誇る。
「注文があれば何でも造る。それが職人やろ。ただ粗末なものだけは絶対に造っちゃイカン!それと、心構えができていないと仕事はできんばい。オレの頭の中では3日先の段取りまで完璧に入っとう。まぁ、つまりは、人として生きるならば、人様に迷惑をかけるなってことたい!」
酒場で暴れかけていたぼくに返す言葉は当然ない。気が付けば師匠の眼からは一筋の涙が。ぼくも思わず師匠に抱きつき「2度と人に迷惑はかけません」と涙ぐむ。
そうだ、決めたぞ! 明日からぼくは練り物職人として全うに生きよう! 手に職を持つんだ! 一生涯、師匠について行こう!
▲ すぼまきを作る手に職人の技が冴える
まもなく午前4時を指そうとしている柱時計。
「オレはこれから材料を魚市場で競り落としてくる。お前さんは今日が初日だからもう寝なさい」と師匠は店を後にした。
「イロイロとごめんね。事情はともあれ、今日は先にお休みなさい」とおかみさんは店頭販売の用意をしながら、声を掛けてくれる。ぼくは遠慮なく店の奥の居間で横になった・・・。
やっぱり単なる酔っぱらいだったんだね、キミは・・・

「お
兄さん、大丈夫ですか?もうすぐ昼になりますよ」
うーん、むにゃむにゃ、どこかで聞き覚えのあるような、ないような声だなぁ・・・。
「あっ!師匠!おはようございます!」
「あはは、お兄さん、何を言っているんですか。ウチでは弟子を取った覚えはないですが」
「えっ?!(そういえば師匠、いつのまにか標準語だし・・・)」
「あらら、昨日のことは全く覚えていないようですね。夜中、【関】の大将に呼ばれたんですよ。酔いつぶれて、カマボコ〜、カマボコ〜と連呼している若者がいる、もしかしたら江角さんの知り合いじゃないか、と」
「はぁ」
「ウチは家内と2人暮らしなので寝るスペースぐらいはいくらでもある。だから、ここに連れてきたんですよ」
「でも、オイラはカマボコと天プラ造りを手伝った記憶があるのれす(オイラもいつもの口調に戻っているぞ)・・・。ほら、包丁で魚を3枚に下ろして・・・」
▲ご夫婦仲良く二人で店をきりもりしている。天ぷらはどれも100円前後、揚げたては最高!
「夢でも見たのではないですか?今は3枚に下ろすのも、ミンチにするのも、成形するのも【機械】でやるんですよ。原料も【すり身】になったものが東南アジアから輸入されている。ほとんどの業者がそれを使っています。極端に言えば、今は【味付け】が職人の仕事ですね」
「いいや、昨日は確かに、この手で魚を捌いたのねん」
「強情だなぁ。それは30年近く前のやり方です。まぁ、私は半世紀以上作り続けているので手作りの技術は持っていますが」
「お願いです、ぼくを弟子入りさせてくらはい!」
「あははは、もちろん断りますよ。人様に迷惑をかける人間とは仕事はできませんから」
あれ?!どこかで聞いたような?デジャヴかしらん?(コラーッ!夢オチかよ!!)
(取材・文・構成【大部分のフィクションを含む】 / くりしん)

※くどいようですが、【めでた屋】さんは居心地の良い大衆酒場です。前回の結末のような体験は絶対にできません。

江角幸一さん(71歳)
昭和9年生まれ、福岡市出身。昭和23年に箱崎から春吉へ。春吉小学校に5年生で転入。春吉中学校卒業後、家業の修業に入る。28歳で奥さんと結婚。先代の後を継ぎ現在に至る。
平成14年には福岡市長よりその技術が認められ「技能功労者」の表彰を受けた。午前1時30には働きはじめ、午後8時には寝る毎日だ。子供がいないので跡継ぎはいないが、奥さんが許す限り生涯現役を貫くという。

江角蒲鉾店
住所:福岡市中央区渡辺通り3-7-10
あっぱれ晴好バックナンバー
電話:092-761-0095
営業時間:開店〜18:00
休み:不定休
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