過去、現在そしてこれからの春吉の魅力を語るコラム
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あっぱれ晴好バックナンバートップ>第12回 吉川かけつぎ店
 

第12回 「恋破れ、ぽっかりと空いた心の穴。ついでに赤フンにも穴。それをふさぐものは・・・」
〜 吉川かけつぎ店 〜

個性あふれる春吉の人、物、店を毎月紹介していきます!
「ワ
タシのぉ、カレーになってください」
そう、ナターシャとの蜜月は、夏の日射しが容赦なく照りつける7月28日の昼2時14分、突然、はじまったのさ。
焼きたてのタンドリーチキンが美味いと評判のインド料理店。
そこで働く彼女からの予期せぬ告白・・・(おい!“カレー”じゃなくて“彼”かよ!)。
メアリーにフラレてから(詳細は鳥博士の回を参照)約半年、春吉探検隊の正装・赤フンドシ1枚で夏の春吉を走り回る日々・・・。
その使命(?)に没頭することで、オイラは恋する心をムリヤリ封印していたのです。
そんなある日の午後、とにかく今日はカレーが食べたい!と、ナターシャが勤める店に偶然入ったのでやんした。
「ルー(大柴じゃありません)とライス(国務長官ではありません)を最初に混ぜて食べないはオカシイネ。美味しくないよ〜」と困惑の表情を浮かべながらも蠱惑的な眼差しを向けてきたのが端正な美貌を持ったナターシャだったのれす(ナターシャの説明が長すぎだよ)。。
ごめんよ、ナターシャ、ごめん・・・

が、秋の気配が見え隠れする9月1日朝8時35分。
本日、そんな蜜月も突然終わりを告げました。
半ば同棲していた2人は前日の晩に、
サイババの信憑性について激しく口論しちゃったのねん。
目覚めた時にはベッドに彼女の姿はない。
部屋には彼女の大好きなジャスミンのお香が焚かれていた。
早起きして出掛けたのかな?
寝ぼけ眼でトイレに向かったオイラは、
用を足すために赤フンに手をかけてビックリたまげた門左衛門!!
「あなたへの愛情のスパイスは昨晩で品切れです。インドに帰ります。ナターシャ」
と、“置き手紙”ならぬ“メッセージ赤フン”が!
そりゃないぜ!麗しのインディアン・ガール!
しかも、細いお香を駆使し、布を焼き切って別れ文句を記しているではあ〜りませんか(普通、記している最中に気が付くだろ!しかも、比喩入りの日本語かよ!)。
ちゃぶ台の上には花瓶代わりのコップに花が生けてある。
ミヤコワスレだ。花言葉は「別れ」・・・(どこまで日本通なんだよ!)。
ナターシャ、カムバーック!と大声で叫んでみたところで、
彼女は西部劇映画の主人公シェーンじゃないので戻ってくるわけもないのれす・・・。
困った時の【いせや】?!

吉川幸人さん(66歳)
▲吉川幸人さん(66歳)
長崎・五島生まれ。学卒後、長崎でトランジスタラジオ製造や洋服店勤務などを経て、かけつぎの世界に。約2年間修業し、昭和37年に福岡で独立。以来、紳士服のかけつぎを“織込み”の技術に特化し手がける。実直で温和な職人だ
にもかくにも、別れ言葉入りの赤フンでは、
探検隊としての活動に支障をきたすのねん。
隊長(どこにいるの?誰?)にバレたら即刻クビだ!
どうにかしなければ!!
混乱する脳味噌を落ち着けるために、
とりあえず、赤フン1枚で、
春吉大通りの24時間営業【いせやフーズクラブ】に向かったのでした。
うふふ、見えてきたよ、飛行機を追い払おうとするキングコングが。
何だか心が落ち着くスポットでやんすね、ココは。
店に入った早々、顔見知りの店員さんとご対面〜。
「どうしたとね?その赤フン。寝たばこね?」
おお、忘れかけていた!
しかも、店員さんの視点からは上下が逆になるので、
これが別れのメッセージと判別できないらしい。
身につけているオイラにしか判らない・・・
ナターシャのわずかな愛情を感じ取った瞬間だ(おい!違うだろ!)。
「ええ、まぁ。しかも隊員への配給は1枚だけなので困っているのでやんす・・・」
「それなら、【吉川かけつぎ店】がベストやね。ウチの店を出て左に行って角の細い路地を左に入るやろ?まっすぐいくと、右手にあるけん。【長野かつら店】の先やけんね。ご主人は紳士服のかけつぎ専門でその道40数年。筋金入りの職人やけん、必ず何とかしてくれるくさ。たしか朝から仕事ばしよんしゃーけん、この足で訪ねてみんね?」
嗚呼、捨てる神あれば拾う神ありとはまさにこのことだ!
早速、【吉川かけつぎ店】を目指して歩みを進めた。
お、あった、あった。
白地に黒い文字で【吉川カケツギ店】と書いてある看板が目印だ。
郵便ポストには吉川幸人さんをはじめ、一家4人のお名前が。
どうやら住居兼用のようだ。
吉川さん、どうかオイラをお助けてください

「お
はようございます」と引き戸を開け中に入ると、すぐ左手の部屋から「おはようございます」と快活な返事が。
中を覗くと2畳ほどのスペースで作業台に向かっていた男性がこちらを向く。
おそらく、この方が一家の主にして、かけつぎ職人の吉川幸人さんだろう。
時計店で修理につかう拡大鏡をメガネの片方に組み込んでいる風貌に少し面食らった。
手には針、作業台の上には仕事途中であろう紳士服、そのほかピンセットやチャコールなど道具が並ぶ。
作業台の周りを囲む棚には幾重にも洋服が積み重なり、吉川さんの頭のすぐ上には目映いほどの蛍光灯がぶら下がる。
(この状況把握に要した時間はわずか1秒足らず)
「あの、このフンドシを完璧に直して欲しいのですが・・・」
「お客さん、ウチは初めてやね。ここは紳士用洋服が専門たい。補正やスソ直しもせんし、もちろんフンドシのかけつぎもせん。そもそも完璧に直すことなんてムリたい。もう少しかけつぎの勉強ばして出直してきんしゃい。そしたら、かけつぎのやり方ば教えちゃってもよかばい」
「はい、ごもっともです。不躾に大変申し訳ございませんでした。出直して参ります」
と、他の隊員に見つからないよう、かけつぎの知識を吸収するためダッシュで春吉小学校の図書館に向かったのねん(一般開放はしてないだろ!かけつぎの本も置いてないだろ!いいかげんにしろ!)
いわゆる“生地の美容整形”なんですね

ーっ、なるへそ。
西日本では「かけつぎ」、東日本では「かけはぎ」というらしい。
毛織物・絹織物・ニット製品などの虫くい・焼けこげ・切りキズ・擦れキズなどを「織り込み」「差込み」「割りつぎ」といった様々な技術で再生する。
そのためには基本的に修理するものと同じ生地が必要だという。
ついだ所ができるだけ目立たないように、
元通りに近づけるのが職人の腕の見せ所のようだ。
吉川さんが愛用する道具たち。針は使いやすいようにご自分で加工するという。福岡市内で今も続くかけつぎ専門店は4〜5軒しかないそうだ
▲吉川さんが愛用する道具たち。針は使いやすいようにご自分で加工するという。福岡市内で今も続くかけつぎ専門店は4〜5軒しかないそうだ
その仕事は“生地の美容整形”といったところか?
ああ、そうか!
1度傷ついたものを“完璧に直す”ことなんて、あり得ないんだ!
だって、恋に破れたハートだって・・・。
吉川さん、すいません・・・反省でござる・・・。
とはいえ、意気消沈してもいられない。
自分自身を鼓舞(?)するがため、
腰に手をあてスキップで師匠(勝手に呼ぶな!)の元へと急ぐオイラだった。
素晴らしき師匠の手仕事

破けた部分の糸を抜いて同じ糸を織り込む「織込み」の技。条件にもよるが1p4方の傷で修復におよそ50分かかるそうだ。料金は3000円前後
▲破けた部分の糸を抜いて同じ糸を織り込む「織込み」の技。条件にもよるが1p4方の傷で修復におよそ50分かかるそうだ。料金は3000円前後
「お
っ、その顔つきを見ると少しは学んできたようやね。これまで40数年、この仕事を続けとるけど、仕上がりに満足できたものは1%もない。この仕事は結果が目の前にすぐ出るけんね。まあ、まずはちょっとこっちに来て見学せんね」
はい、どうも、先ほどは大それたことを申し上げました。
師匠はひざ下に直径3ミリほどの穴が空いたズボンを手にして裏返す。
「まずは傷口にあてる共布を裁断するばい。この布は商品を買ったら貰えるものやね。ポケットによく入っとろうが。共布がない場合は、外見には関係のないスソの返しの生地などを穴よりやや大きめに裁断するったい。ここで重要なのは、柄モノはきちんと傷口の柄に合わせること。生地の織り方や方向にも注意せないかんぞ」
なるへそ、
つまり生地の素材や織り方、柄などで作業の難易度が決まってくるわけなのねん。ふーむ、素材、織り方、柄を考えると天文学的なパターン数が生まれるわけでやんすね。ほとんど一期一会の境地ですなぁ。
「傷口は作業の前に必ず糊づけせなイカン。これは傷口を広げないこと&作業の範囲を小さくし工賃を少しでも抑えることが狙いじゃ。まぁ修理する面が小さければ小さいほど目立ちにくい利点もあるったいね。で、破けた部分の糸をこの先が尖ったピンセットで抜き、傷口の柄に合わせて仮縫いした布地の糸をほどいて、自分で作った特製の針で1本1本織り込んでいくったい」
これが「織込み」と呼ばれる技術でやんすね。
本に書いてありました。
でも実際に目の当たりにすると凄まじい技術なのねん。
ミリ単位の手仕事ワールドじゃないですか。
機械にはとてもムリな領域ですな。
でも、師匠、オイラはとても根気が続きませぬ・・・。
奥深き職人道。恋に破れたココロまで“かけつぎ”できるのか?!

「お
金をもらう以上は、日々創意工夫と研鑽を重ねながら質の高い仕事を目指さないとダメばい。でも年月が経った服はどうしても色落ちや日焼けがするけん、共布や裏地の色と違ってくるったい。仕事を受ける時に色目と生地を触れば出来上がりが判るとよ。そん時にくさ、お客さんにはどういう仕上がりになるかきちんと伝えるったい。お客さんもどうなるか心配しとろうが。目立つならばあらかじめ目立つと伝える。これも重要な職人の仕事たい。まあ、他の店がどげんしよるかは全く知らんけどね」
うーむ。職人道に終着点はないのですな。
じゃあ、失礼してオイラもそろそろ赤フンを取りますよ、師匠。
締め込みがちょっと短くなるけれど、
裁断する生地はこれぐらいの幅でOKでやんすか?
え?何もそんなに血相を変えなくても・・・。
いやいや、オイラのことは全く気にしないでください。
完成したらすぐに帰りますから。
とはいえ、この糸1本1本にナターシャのオイラへの愛が込められていると考えると(明らかに勘違い)、何だか泣けてくるのねん。
ごめんよ、ナターシャ、キミのココロはこの糸のように繊細だったんだね。
オイラはいまごろ気が付いたでやんす・・・。
そうだよね、ハートブレイクは、
自分自身で修復していくしか道はないのねん・・・。
ああ、イカン、集中力がもう切れてきた。
吉川さんの趣味は毎日の散歩と休日の格安ランチ巡りや日帰りバスツアー。奥様と1男1女の4人住まい。春吉歴も40年以上だ
▲吉川さんの趣味は毎日の散歩と休日の格安ランチ巡りや日帰りバスツアー。奥様と1男1女の4人住まい。春吉歴も40年以上だ
なんだか頭がぼーっとしてきたぞ。
師匠、ちょっとトイレを拝借しますね。
うん?まぁまぁ、そんなに怒鳴らないでください。
キレイに使うのねん。
あら、どうも。
師匠の奥様ですか。
はじめまして。
ありゃりゃ、大変!
師匠!奥様が、奥様がアワを吹いて気絶しちゃったのれす!
だ、大丈夫ですか?!
師匠といい、奥様といい、一体どうしちゃったんでやんすか?
まぁいいや(全くよくない!)、とりあえず用を足して考えるのねん。
でもさ、やっぱり赤フンを肌身から離すと、
ココロもカラダも何だか落ち着かないでやんす・・・。
これって職業病かな?(探検隊が職業なのかよ!!)

(取材・文・構成【大部分のフィクションを含む】 / くりしん)

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