過去、現在そしてこれからの春吉の魅力を語るコラム
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春吉のイメージ写真と編集後記
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晴好大通りバックナンバートップ>第6回

記憶にとどめておきたい
歴史のエピソードがある。
春吉にはこんな話があるそうだ。
〜人間の誠に生きた文士・原田種夫〜
「ひとをにくむなかれ にくむこころははりねずみ サボテンのとげのいたさである ゆるしてやれ いたわってやれ ひとのにくたいの一部には どうしても消えぬ臭い所がある それがにんげんが神ではない印だ ゆるしてやれ いたわってやれ。」

れは「人間」と題された文学者・原田種夫さん(享年88歳、1901〜1989)の詩である。博多区中洲・西大橋の横にある黒大理石製の彼の文学碑に刻まれている。初めてこの詩と出会った時、乾いた大地に水がすーっと染み込んでいくような、そんな深い感銘を受けた。

田さんは九州文学界隆盛の基礎を築いた人物、あるいは九州文壇の黒子と言われている。北原白秋に師事し、劉寒吉、岩下俊作、火野葦平ら九州出身の文士とともに、第2期「九州文学(1938〜83)」など様々な雑誌を発刊し続けた。詩、小説、文壇史、随筆などその文学活動は幅広く、主な著書には「風塵」(芥川賞候補作)、直木賞候補3作のほか、「西日本文壇史」、「記録九州文学」、「実説・火野葦平」、「さすらいの歌」、「原田種夫全集(全5巻)」などがある。

「このように多彩な創作の才能を持ちながら、原田さんが選んだのは必ずしも中央の文壇を目指す華麗な道ではなかった。生まれ育った福岡市春吉の地に根を下ろし、生涯、借家暮らしを続け、地域文化の土壌を黙々と耕し、種をまき、花を育てる裏方として『縁の下の力持ち』に徹したのである」(西日本新聞1989年8月17日付社説)

年の随想集「ペンの悦び」(西日本新聞社)を読むと、春吉四番丁に生まれ、その生涯をずっと春吉で過ごした原田さんの幼い頃のことや、その後の苦難に満ちた文学活動の軌跡が自伝的に語られている。家柄のよい家庭に生まれ育った彼だったが、21歳のとき父親が亡くなり、原田家は倒産の憂き目に会う。学費が続かず大学中退、親戚などからの誹謗、貧困苦、生活のための嫌な仕事・・・。そうした逆境と格闘しながらも、一方で常に同志を思いやり、雑誌を発行し続けるため広告費集めに奔走することもあった。

つて春吉2丁目には「幸村」という旅館があった。そこは火野葦平が来博した際の定宿で、1951年頃からしばしば編集会議の場所としても使われたという。当時、同館でお手伝いとして働いていた女性(76)は次のように振り返る。「原田先生はいつも細身の体に着物をまとって颯爽としておられました。無欲な方でね。本を書いてお金や名声を得ようとかそう感じさせる所は一切ない。人望は厚く、文学に対する情熱は人一倍。そんなお方でしたよ」。

岐にわたる彼の著作の中で、最も印象に残るのは、遺稿となった「かたりべ第9号」(1990年1月発行)への寄稿「花恋い・人恋い」だ。亡くなる少し前、病室で約2ヶ月間を過ごしていた彼は次のような文章を綴っている。少々長いが引用させて頂く。

「人間は心の裏は見せはしない。だが、わたしが、米寿の会の前々日、心筋梗塞で倒れると唾もひっかけず、向こうを向いて、わたしを粗大ゴミと同一視したご仁がたくさんいる。利用される間だけ、わたしにべったりで、役に立たぬ、効用なしと見るや、本性をあらわした鬼がいる。仮面を知らぬわたしが愚か者だった。
神でない人間には、肉体の一部に、どうしても消えぬ臭い所がある。それが、神と人間の区別なのだ。わたしは、久しく幽閉されて、はじめて人間の真実を見た。人間とは、怪しいものだ。悪魔と同居していて、他人のことなど、かえり見る暇がなく、自分のみを大切に扱う動物だ。人が泣こうと、人が苦しみもだえようと、人が死のうと、路傍の草のそよぎとしか思わないのだ。それが、人間の正体なのだ」

そして最後は次のように締め括られている。

「哀しい人間よ、さびしい人間よ。無常を知らぬ人間は倖せだ。風にゆらぐ草の葉だ。それゆえにこそ、人間が恋しい。人よ、わたしを振り捨てないでくれ。ああ、人が恋しい」。

「ゆるしてやれ いたわってやれ」と、文学碑は静かに私たちに語りかける。21世紀になった今もそのメッセージは光を失っていない。いや、むしろ輝きを増している。せわしい日々の暮らしの中で、人間関係に疲れてしまったとき、図らずも人を嫌いになってしまったとき、そんなときこそ春吉が生んだ偉大な文学者のこの詩を思い出したい
(文/フリーランスライター・西松宏)
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