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晴好の風

「晴好ブランドの酒ば作ろうたい!それも米から!」という、画期的アイデアから実現した企画。

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2009晴好の風ファイナル

 小春日和と厳冬が代わる代わるやってくるような、早春の2月22日の日曜日。田植えから稲刈りまで自分たちの手で行った(ワタクシは稲刈りだけですが・・・)、愛しの酒・晴好の風とご対面する日がやってきた。前回、天吹酒造さんにおじゃましたのが10月26日だから、ざっと4ヶ月が過ぎたことになる。その間にわれらが山田錦は蔵人の手によって、どんな酒に生まれ変わっているのだろうか。

 

 

 この日も前回の稲刈りに引き続き、あいにくの小雨模様。天吹酒造に到着すると、桃色の梅の花が出迎えてくれた。靴裏を酸とアルカリの液で殺菌し、敷地奥の蔵に足を踏み入れると、蔵内の空気が前回の甘い匂いから、日本酒のそれに変わっている。今回は約1反の金色の田圃から、約400Lの酒ができたらしい。720ml入りの4合瓶でおよそ400本強くらいか。

 

 今回は、晴好の風の瓶詰めを体験するわけだが、ただ瓶に入れただけでは面白くないだろうと、遊び心のある仕掛けが用意されていた。まず、酒を入れる瓶を透明、ブルーの透明、ブルーのすりガラス、白すりガラス、深緑の5種類の中からチョイス。蓋をするための王冠も瓶に合わせて5種類が用意されている。つまり、好みに合わせて5×5で25パターンの酒瓶が完成するわけだ。さらに、ラベルも凝っている。昨年までの通常の晴好の風ラベルももちろん用意されているが、ほかにも白地の和紙に自分で好きな絵柄を書いて貼れるらしい。晴好の風は米作りから関わった春吉地区オリジナルブランドの酒だが、さらにその中でもほかの誰も持っていない唯一無二の酒が作れるというわけだ。これはまた粋な計らいだ。

 

 5種の瓶から、一番手作りっぽい感じがするとの理由で透明の瓶を選んだ。そして王冠はシルバーになにも印字がしてないシンプルなものを。酒を入れる列に並び、いまかいまかと待っていると、ようやく自分の番がやってきた。ディスペンサーのような機械に瓶をセットし、グイッと押しあげると酒がゆっくりと注がれてゆく。その雫はどこまでも透明で清冽。そして瓶を持っている掌が、氷を押し当てられたように冷えていく。その理由を聞くと酒の品質が変わらないように、低温殺菌して0℃より低い温度で貯蔵しているからとか。清酒の場合は普通の水と比べて凝固点が低いため、マイナス5℃〜10℃でも凍りにくいのだ。なるほど、勉強になりました。それにしても、瓶をセットするだけでうまい酒が水のように出てくる夢のようなディスペンサー。これってちょっと多めに瓶詰めされたりしないんだろうか? と、期待を込めて注ぎ口を見つめているとその心を見透かしたかのような「720mlきっかりで止まりますから、大丈夫ですよ」と蔵人のひと声。ああなんか恥ずかしいぞ。念を送っていたのがバレたのだろうか。

 さて、無事に酒を注入し、くるくると回る蓋締め機械で王冠をはめると瓶詰め完了となった。さあ、味のあるラベルを作るぞ、と張り切ってはみたものの、悲しいかなここで気付いた絵心のなさ。天吹酒造の風神さまを描くが目を覆う有様。じゃあ華麗に書でもと思ってもなんかバランスが悪いぞ。ほかのみんなの“作品”を拝見、と周りを見渡せば、背伸びして机で描いている子ども達のなんと自由で、気持ちよく描けていることか! 3枚目を失敗したところで観念して、結局、表のラベルを貼らず、輪ゴムで止める小さなタグだけをはめることにした。まあ、これも美しく澄んだ酒が主役ってことでよしとしよう。このオリジナルラベル作りには、みんな目を輝かせて取り組んでいて、目論見は大成功。なかには、最近産まれた孫の顔と名前を事前にプリントアウトしてきて、それを出産祝い(お返し?)用としてこしらえる人も。

 

 そして瓶詰めが終わり、酒蔵の2階で用意していただいたおにぎりや鉢物、釜揚げうどんを戴くことに。そこにさっき瓶詰めしたばかりの2008年度版晴好の風が運ばれてきた。コップに注いでもらい鼻に近付けると生酒特有のフレッシュで華やいだ香りが鼻腔を駆け抜ける。口に含むと、んーうまい! 去年、ウチで飲んだ晴好の風もうまかったが、今日は一段と美味しく感じる。やはり、絞って時間が経ってない酒の特性なのか、酒蔵で飲む特権なのか、はたまたその両方なのか定かではないが、スーっと喉に染み入って五臓六腑でチリンと鳴る美味なる味。しばらく自宅の冷蔵庫の主となる1本は、桜の花見の主賓に決まりだな。

いやはや2008年、晴好の風プロジェクトに参加させてもらって本当によかった。次回、2009年版は田植えからよろしくお願いします。

 特別純米酒・晴好の風は、春吉地区の酒販店でも販売するので、みなさん珠玉の一杯を楽しんでくださいね。

(取材・文 陣内研治/撮影 鎌田秀子)

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